2017年1月8日日曜日

【書籍推薦:ちょっと笑ってお金と仕事と人生のタメになるクレジット会社の舞台裏】 『督促OL修行日記』 『督促OL奮闘日記』

https://honto.jp/netstore/pd-book_26554761.htmlあのシェイクスピアは『ヴェニスの商人』で人間と

借金の凄惨なまでの本質を、「嫌いなものは殺し

てしまう、それが人間のすることか?」 「憎けりゃ

殺す、それが人間ってもんじゃないのかね?」と

表現したが、今回紹介する作品は、クレジットカ

ード会社務めの督促(債券回収)OLのちょっと

笑えて仕事のタメにもなる実録談集になります。
https://honto.jp/netstore/pd-book_27318383.html



「今からお前を殺しに行くからな---」
                      
お客様はそう言うと、プツリと電話を切りました。

でも、私の職場ではこんな言葉を言われるのは

日常茶飯事です。だって、わたしの電話を待ち
 
望んでいるお客さんなんて、この世界には一人

もいないのですから。 (p.13 はじめに)












著者は、運悪くも超氷河期と言われる就職難まっただなか

私大文系でとりたて特技もなく、面接でも上手くしゃべれな

く、やっとクレジットカード会社から内定を得て、よくわから

ないが営業とかさせられるのだろうと軽く考えていたのだが

配属先は、督促(債券回収)のコールセンターだった!!


しかもお客様は「粒ぞろい」の、社内でも問題のある人達。

著者の生き残りをかけた、コールセンターサバイバル生活

を待ち受けていたのは、お客様の「逆切れ」「泣き出す」「死

ぬ」などの支払い拒否の嵐、親族に内緒で借金する人、ダ

ンナの借金を肩代わりする奥様の話など、ワケありばかり

の督促電話の日々だった。


挙句は、返済の代わりに菜園の野菜を送る客の登場(笑)


しばらくして、新人時代の著者は枕一面が鼻血で真っ赤に

染まったり、夜間に発熱して朝には平熱に戻るといった謎

の奇病に襲われて、半年後には体重が10キロも減少する。


こんな気弱な彼女は周囲と比べトホホな回収率の毎日では

あったが、日々独自に編み出したノウハウで、年間2000億

円の債券を回収するまでに成長する。過酷な環境にあって

自分自身と仲間を守るためと日々工夫する姿勢は、プロフ

ェッショナルであることの普遍的要素を感じてします。


著者はある日、武勇伝クラスの先輩に、人から嫌がられる

仕事なのに何で続けるのですか、と質問し次のことを聞か

されます。


信用を失うことは命を失うということに等しい。信用のない人
は救急車だって助けてくれないんだ。 

私たちが相手に嫌われても、怒鳴られても、包丁を突きつけ

られても、催促しなければならないのは、お客さまの信用を

守ることができるから。お客様の信用を守るのはもしかしたら

命を守ることになるかもしれないしね。(p.221)


素晴らしい視点と思う。債券回収の負のイメージを払拭して

くれる、慈悲の心だ。もちろん世間の誰もが督促業務にこの

イメージを持ってくれるのは難しいと思うが、本書は他にもス

トレスや職場環境で苦しんでいたり、理不尽な顧客や仕事と

葛藤するもうひとりのあなたの心を応援してくれるストーリー

としても読めるのです。


話しの合間合間にある、督促OLのコミュ・テクの欄も秀逸!

読むと「へぇ~」と思うし、人間学的な教科書にもなります。


再びシェイクスピアを引用するなら「慈悲は義務によって強制

されるものではない、天より降りきたっておのずから大地を潤

す、恵みの雨のようなものなのだ」(『ヴェニスの商人』)という

ように、優しさや慈悲は自らの人間力とプロフェッショナリズム

より出てくるものだし、皮肉にも不条理(借りた金を返さないで

屁理屈こねるのは不条理以外になし)が与えてくれるようだ。


と、色々と考えさせてくれる、4コマ入りのお勧め文庫本です。



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