2016年12月11日日曜日

【書籍推薦:英国チャンネル諸島の人間賛歌】 『ガーンジー島の読書会』


以前、『プリズン・ブック・クラブ』の記事を書いたとき、同書で

実際に登場人物たちが読んでいた、この本を知って、興味を

持ちました。
 
 

https://honto.jp/netstore/pd-book.html?prdid=25937654

舞台は1940年代初頭の英国チャンネル諸島(英仏海峡の

間にある島々です)を構成する2番目に大きな島のガーン

ジーが舞台です。1940年7月から1945年5月9日まで

ナチス・ドイツの占領下にありました。(尚、チャネル諸島

は最大時4万人が駐留して、要塞化されていたとのこと)


当初こそ、丁重な態度であった占領軍も、戦時下における

食糧の慢性的な不足、衛生用品の欠如の他、外出禁止時

間制限など、ナチスの統制は次第に厳しくなっていきます。



主人公のジュリエット・アシュトンは作家で、戦後、あること

からガーンジー島の人たちと文通を始めることとなります。

とある日に、彼女は島の占領時代にエリザベスという女性

が仲間と外出時間規制を破った言い訳として、ナチに「ガ

ーンジー読書会の帰りです」というウソを言い、あとで実際

に、島民の拠り所となる読書会を創設したことを知ります。

ここから物語りは、個性豊かな登場人物たちをからめて

ぐいぐいと進んで行きます。




 

 戦時下の勇気、奴隷労働や収容所、食糧の欠乏という戦争の

 悲惨な現実の下にあってなんとか生きようとする人の姿や、そ

 んな苦しさのなかでも、ジェーン・オースティンの『高慢と偏見』

 や、マルクス・アウレリウス『自省録』、トマス・カーライル『過去

 と現在』などの著作を読み、生きる糧にしようとする島民の姿

 は、読書を愛する全てのものにとって幸福感を与えてくれます。


  読書は心の飢えを満たす行為なんです、やはり。


 ほぼ全編が、文通のやりとり形式で描かれる小説なので、読み

 進めていくうちに、英仏海峡の潮風を感じながら、登場人物たち

 の内情を知って、親近感をもっていくようになっている作品です

 電子メールやLINE全盛の現代だからこそ、忘れているものが

 ここに詰まっています


 最後に、ガーンジー島を訪れた主人公が見つけた結論とは?
 
 こういうユーモラスな視点でのオチって英国らしいです。


 あと、あのオスカー・ワイルドが憎らしい形で登場しており、作者
 
 はアメリカ人ですが英国文化好きにとって思わずニンマリさせら

 れる後半の物語を演出しています(このセンスには脱帽した)。

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